■ INIT BRIT LuLu's love love UK contents.    TASTE OF LONDON DRESSING -あたらしいものとふるいものと。-2

 今までの僕はそうやって、デザイナーであるが故かもしれないけど、わりと「モノ」ばかりを見ていた気がする。だから次回は大好きなロンドンで「ヒト」に触れてみたいと思った。
 もちろん今までにも、あの街では本当にいい出会いに何度か巡り会ったのも確か。友達になった人もいるし、ショップの店員と客として一時言葉を交わしただけでも、道中で親切にしてもらっただけの人でも、それは“出会い”として心にずーっと残っているケースがたくさんある。

 その人たちの中でも、今の僕の興味を一番そそるのは、所謂その老舗、ロイヤル・ワラントを冠するような銘店で働く人たち、色々な意味で世界一優秀とされるブラック・キャブのキャビーや、ホテルのスタッフのこと。
 僕は高級な部屋に泊まれるワケなんてないから、ホテルに関してはそのことを味わうことはできてないけれど、キャビーさんには何度も世話になることもあるし、銘店へだってちょっと頑張れば行ける。
 なんでそんなことを考えたかというと、以前の渡英時に失敗したなと思った一日があったからだ。

 別コンテンツ(旅行記)にもそのことは少し書いてあるのだけれど、その日、僕はほぼ一日をかけて“老舗詣”をしようと企んでいた。ロイヤル・ワラント巡り。もちろん、身分も年齢も不相応なのは承知の上(^_^; 目指すはジャーミン・ストリート、ボンド・ストリート、セント・ジェイムズ・ストリート周辺。
 しかしそこまで自覚していながらも僕は、前の日にカムデンで遊んでいたのと変わらないパンク崩れな格好で出かけて行ってしまったのだ。その頃はあんまりそのへんを深くまでは考えていなかった。

 もちろん、実際に現場へ来てみて居心地の悪さに首の絞まる思いになった。でも僕には行く予定の店も覗いてみたい店もあったから、それを振り切ってある意味、開き直って強行。
 蛇足ながら僕が言うその界隈の銘店とは、様々な都市に同じように存在するような高級ブランドショップではなく、その地でウン百年という歴史を誇る素晴らしい生っ粋の英国の老舗の数々こと。

 店に入れば場違いなことを重ねて知らされる状態になってるから、せめて態度や店員さんとの接し方だけでも、失礼のないように振舞おうと頑張った。その成果 なのか何なのか分からないけど、そんな僕のことを、ほとんどの店は気持ち良く迎えてくれたのだが......(ハロッズなら速攻入店拒否だろうけど)。
 ある店では、ある商品についての親切丁寧な説明とアドバイスを受け、最高のラッピングでギフトを仕上げてくれた(時間はかかりすぎだけど......)、別 の店でも同じような紳士的な対応を受けた、当主筆頭に3人がかりで色々と助けてくれた店もあった。

 帰り道、僕の中には感謝感激と一緒に、なんとも言えないデカい罪悪感が残ってしまった。考えてみれば僕にとっちゃ、生まれて初めての文化に触れた日だったワケだ。
 それ以来、僕にとってその世界は大きな興味とリベンジの対象となった。

 そういった店を特集したシリーズの番組をCSで見る機会があったのだけれど、それに出演しているどの店主もスタッフも、自分の店の商品に対するただならぬ 自信とか、その店で働いていることへの誇りみたいので自分を満タンにしていた。その姿は、あまりに格好よくて、また英国的だと思った。
 どうやら、一方的な「お客様は神サマです」という状態ではないようだ。そのかわり、本気で相談したり助けを求めたりすれば、彼らはきっとフル回転の知識と気持ちとで喜んで力になってくれるハズ。それも「お客様の言いなりにへいへいと...」ではなく、だ。サヴィル・ロウにある有名紳士服店の当主が、お客様が選んだものがもし似合わなかったとしたら、そのへんははっきりとアドバイスさせていただく、と言っていた。きっとその後は、本当にその客が似合う最高のものを探し出すまで、懇切丁寧にどこまでも付き合ってくれるだろう。

 また同じ時期に、客側の心得的な文章を読む機会があった。その中には、そういった最高のおもてなしを受けたいのなら、それなりのルールを守らなければいけない、とある。そして、そのルールを守るという部分からもが、銘店で買い物をするという楽しみである、と。
 このルールを守るどころか存在すら知らないヤツらが多いがために、ヨーロッパの有名店では日本人が軽視されるようになってしまったと嘆いてもいた。確かにそうかもしれない。僕にもパリでそういう日本人のオバちゃんの佃煮状態を目撃してゲンナリした記憶がある。

 が、人のことは言えない。あの時、僕も一つのルール違反をしているのだから。
 あの時の僕は“店がエラそうでスゴくって、居心地悪い思いをしてヤだった”とかいうんじゃなく、まず店に対して失礼だった。その結果 、自己嫌悪で気分が悪かっただけなんだ。
 もちろん着飾って行く必要などまるでないし、パンクだの何だのが悪いとも思えない。そういったアイテムだって上手く使ってその人に似合うようにキチンと仕上げていたら、極論かもしれないけど、それは僕は正装と言えると思っている。ちなみに僕のその時の格好は、ボロいリーバイス、ヨロヨロのブーツ、着古したHERE THERのTシャツ、軍払い下げちっくなジャケット。個々の服が悪いわけではなく、ツメツメのスケジュールの中、長い距離を歩く旅行者であることを優先した相手無視の格好悪さだったと思う。
 もちろん、そんなハードな旅行者であることは変えられない。だから次回だって同じような格好をして行く。けどその中に今度は、アニエスのシンプルでクールな服も混ぜていくつもりだ。

 どうしても補えないのは老舗に出入りするのに不釣り合いな「年齢」、そして知識のなさ。でもこれは前回で、正直な気持ちで接すればそれが返ってくるのは分かっている。分からないことは素直に聞けばいいんだ。きっと聞いた以上のことを貰えると思っている。
 きっと今の僕はまだ、あの有名な喫煙具屋さんに行ったとしたら「僕は葉巻のこと、ぜんぜん分かりません。でも友人へのギフトを見つけたいんです」と言うと思う。だけどいつかそれ相応の歳と中身になった時「自分にピッタリなものをブレンドしてほしいんだけど」って言えるようになるのが、遠い先の、けっこう夢だったりする。

 

■ back to INIT BRIT top ■

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送