■vo.16 思い出のホランドパーク。
ホランドパークを出た所のこの道の先の大通
りが、僕にとってやはり思い出深いホランドアヴェニュー。TUBEのホランドパーク駅とノッティング・ヒル駅が並ぶ、これまたローカルさを残す落ち着いた通
り。もしも一番好きな道は? と聞かれたら、僕は迷わずここを挙げる。
映画で一躍注目されるようになったノッティング・ヒルに比べると、ホランドパークからその奥のシェファーズ・ブッシュのあたりはまだまだ静かで、駅もかなりちっこぃ。このへんには、これといった大きな店がない代わりに、一本入った所などに小さないい店があったりする。
ノッティング・ヒルの方へ近づいて行くに従い、店も徐々に増え初めるけどそれでもハデさはそんなにない。やはりこのへんも、一本入った所などに話題になっている店が点在している感じ。ルル・ギネスの店もこの奥だしね。ポール・スミスの店も、見た目は真っ白な品の良いフラットで街並みと完全同化してるから、知らないと全く気付かないかもしれない。
最初、新しいインディーズブランドやモダン・ヨーロピアンのレストラン、ガストロパブなんかがこぞってこのエリアに進出したので、今ではすっかり有名なオシャレな地域になったけど、僕にとっては、ごくごく普通
の街、“心の地元”という感覚がどうしても抜けきれない。
よく「ノッティング・ヒルのへんでブラブラしてて」とか言うと、「え?あのオシャレな所でしょ?」っていうリアクションを貰うことも少なくないんだけど、僕にしてみりゃ、ちょっと違うんだよ、かなり(笑)。
ここん所は、あのホテルに出会ったせいでケンジントンのハイストリート周辺を拠点としてるけど、そこからもこうやって十分徒歩圏内だし、無理してでもなるべくこのへんには長い時間を使うようにしてる。この街にくるためにロンドンへ行くようなもんだもん、極端言っちゃえば。
ってのも、僕は初めてロンドンに来た時に、さっき通ってきたそのホランドパーク駅周辺に滞在し、拠点としたのね。色々個人的にハードなことがあった時期だったりもして、夜、呑んだ帰りに向こうの方に見えるノッティング・ヒ
ル駅の明かりとか、なんでもない一般家庭のフラットから漏れてくる明かりにどれだけ癒されたことか......。
朝が来てまた出かけていく時も、いつも朝靄ん中歩いてまだ自動改札じゃないホランドパーク駅からTUBE乗って。あんまり手入れされてないっぽいフラット前の庭だとか、チラッと見えるバックヤードとか、本当にホッとしてしまうよ。今でも実はこのへん歩くとふと気を抜いた瞬間にどーしようもなく泣けてくる(笑)。
この前の話に戻るけど、その時いつもMDで聴いてたのがMANSUNってバンドのアルバムだった。だからパブ犬現象で、家で彼らの曲聴いてると、これまた泣けてきちゃうんだよ。どうやら身に染み付いてしまったこのへんの空気感が蘇ってきて包まれちゃって。なんか生理的にっていうか魂的にって言うか「ホランドパークに帰るぅぅ!」って叫び出すんだよなあ。病気?
さ、そろそろ丁度いい頃かな。今日は土曜日でしょ? んなら、ノッティング・ヒル名物のアレに行こう!
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